遍路・高知県Ⅱ
兼・海岸線を歩く
2014年3月14日~19日




2013年、軽い気持ちで遍路を始めた。バスでは味気ないし、歩きは時間がかかり家庭の事情が許さない。中を取って自転車と歩きにした(今回は全て歩き)。遍路宿でお遍路さんと話していると、「3回目の歩き遍路です」「5回歩き今回は路線バスで回っています」口数の少ない人が「10回目です」という。悟りに至る道は遠い。一方、百名山を3回登りましたとか東海道を2回歩きましたという話はあまり聞かない。遍路では1番の寺から始め、88番の寺を参拝したら終わりではなく、お礼参りと称してそのまま1番の寺まで行き、ぐるりと一回りして終わりとなる。そのまま2回目の遍路を始める人もいる。また、納め札は遍路の回数により色が違い(50回以上は金色)、何度も遍路に来たくなるように出来ている。

3/17 昨日の宿(山郷旅館)は割烹旅館というだけあり安い割に料理が美味かったが、泊り客は私一人だった。さて、早朝豪華な朝食を食べていると、腹の奥から何やらこみあげてくるものがある。やばい、とトイレに駆け込む。腹の中の朝食は全て無くなってしまったが、休んでいるわけにもいかずバスの時間も迫っているので、これ以上悪くならないよう祈って宿を後にする。7時半、昨日歩き終わった所までバスで戻り歩き始める。幸いその後腹の調子は順調だった。客が一人の宿は要注意である。
15日の朝、サングラスがない事にきがつく。前日のヒッチハイクの車の中に忘れたようだ。天気も良く、海岸を歩くのにサングラスは必需品である。しかし、15日のコースは小さな集落ばかりで眼鏡屋は無さそうだった。16日の昨日、久しぶりに小さな商店街を通った。町の人に眼鏡屋があるか聞いてみると、100m程先にあるという。早速、行ってみたが、シャッターが閉まっている。昨日は日曜日なので定休日であった。
今日こそは、と宿で眼鏡屋の場所を聞き、朝バスの中からシャッターの降りた眼鏡屋を確認する。歩き始めて3時間後、この眼鏡屋の前に差しかかる。幸いシャッターは降りていない。が、押しても引いてもドアが開かない。外出中、という小さな札が架っていた。2、3軒先のコンビニで聞くと、500m程先のホームセンターにあるとのこと。そこで売れ残りのサングラスが300円で買えた。この店を出てしばらく歩いた所にまた眼鏡屋があった。奈半利の町はなかなか大きな町だ。
11時 昨夜の宿に到着。預けた荷を引き取り再出発。荷がズシリと感じる。
13時 27番札所、神峯寺(こうのみねじ)登り口に到着。遍路用品以外の荷物は見えないところ放置して標高430mの寺を目指す。曲がりくねった車道、時には並行している険しい山道を登ること1時間半、やっとたどり着く。神峯寺の手入れの行き届いた立派な山門の脇に神峯神社(こうのみねじんじゃ)の古びた鳥居が並んでいる。神社の方が創建は古いが現在は訪れる人は少ないようだ。鳥居を貸して神社を取られる、の好例であろう。
途中で歩いている人には会わなかったが、寺には多くの車とお遍路さんがいた。遍路を始めるのが数年遅かったら、私も車のお世話になっていただろう。山を下り国道に出たところで16時半になったので、歩行をやめ、バスで安芸市に向かう。この日の宿はビジネスホテル、夕食はさびれた居酒屋でとった。
      ******** 17日海岸線歩行距離:15km 遍路:27番札所、神峯寺

 
7:30羽根大敷より歩行開始。人家がある所は  8:10羽根岬が近ずく
国道は海の中に造られている
 
8:10 室戸岬は行当岬の影でで見えないようだ          8:20羽根岬

 
9:00 高知市方面、集落のある海岸が増える         9:50 金の掛かった立派な堤防上を歩く

 
10:50昨日宿泊した宿に着き荷物を引き取る 11:40安田町に入り、久しぶりに食堂で昼食

 
13:00安田町の外れの27番札所、神峯寺(こうのみねじ)登山口 13:30この山の頂上直下430mに神峯寺


13:50あと1.3km        14:10あと790m     14:30神峯神社の鳥居、荒れている雰囲気


14:30 27番札所、神峯寺山門        14:50 本堂

 
15:00 大師堂                    16:40 神峯寺を降りた海岸で歩行を終わり
                                にしてバスに乗る
              
   ********             ********

3/18 7時半、バスで昨日の歩き終わり地点に戻り、歩行再開。歩き始めてすぐに小雨が降りだす。午前中の歩行は国道と堤防上の道が半々であった。堤防は海面から10~20m、堤防上の歩道の幅は2~3m、歩道の海側にはさらに高さ1m、幅50cm程の堤防がある(写真)。この高さ1mの堤防は所々幅1m程切れ目があり、海側には階段があり海に降りられる。しかし、この切れ目のほとんどが新しいコンクリーで埋められるか、金属製の重そうな引き戸で塞がれている。高知は南海トラフ地震の津波警戒地域なので三陸沖地震を教訓に急遽作ったのであろう。この堤防の切れ目を埋める津波対策を思いついた役人は今頃「低予算で有効な仕事ができた」と、栄転を夢見て役所で居眠りしているであろう。しかし、これでは地元の人が海に出るには高さ1mの堤防を乗り越えなければならない。年寄には酷な作業である。「海で貝を採りたいけど、堤防を乗り越えるのがしんどいから家で居眠りしようか」という声が聞こえてきそうだ。歩きながらこの堤防上の切れ目をコンクリーで埋める対策の津波に対する効果を考えてみた。高さ10mの堤防(イ)上にさらに高さ1mの堤防(ロ)があり、長さ500m毎の(ロ)に幅1mの切れ目があるとする。高さ10m以下の津波が来た場合は(イ)の堤防が防いでくれる。11m以上の津波の場合は(ロ)の切れ目がなくても同じである。万一、10~11mの津波が来たときには、切れ目をふさいだ効果が発揮される。しかし、500m毎の幅1mの切れ目から流れ出た海水による被害などないと考えてよいだろう。切れ目から流れ出た海水により堤防が破壊されるとでも考えたのだろうか。どう考えても弊害の方が多い津波対策に思えてならない。私の理論を検証するには実験するのが正確で早道だが、費用は幾らぐらいかかるかなあ、などと取り留めもない事を考えながら歩いていると、はるか遠くに霞んでいた岬がすぐ目の前に来ていた。
10時半 昨夜のホテルに寄り預けた荷を受け取る。ホテルのある安芸市は奈半利と同程度の大きさの町に見えた。昼食は町の総菜屋で購入し雨の中、屋根のある公園で食べた。
午後はサイクリングロードを14km、4時間歩く。午前中の堤防より幅広く作った堤防をサイクリングロードと名ずけ、遍路道にも流用しているものだ。小雨が降っているせいか、自転車には1台も合わなかった。
16時 土佐黒潮鉄道・ごめんなはり線、夜須(やす)駅で歩行を止め、宿に向かうことにする。電車に乗るべくホームに駆け上がると、丁度電車のドアが閉まった所だった。しかし、私を見た運転手兼車掌さんは再度ドアを開け、乗せてくれた、感謝。民宿、游庵の食事も美味かったし相客の遍路仲間も楽しかった。1日小雨模様の天候だったが良い日だった。
      ********  18日海岸線歩行距離:26km

 
7:40 国道沿いを歩く            8:40 小雨模様の堤防上を歩く

 
9:00 堤防の左側の1mの壁について考察した  9:40 2時間堤防上を歩き、安芸市に近ずく


10:00、10:10 安芸市には2本の川が流れていた    11:10 安芸市の惣菜屋で買い公園で食べる

 
12:00 安芸市の外れにある安芸漁港          12:00 ここからサイクリングロードが始まる

 
12:10 今までの堤防より広いだけのサイクリングロード   12:20 今回の目的地・桂浜の名が初めて
                            出てきた。サイクリングロードは14kmだけ。
 
13:00                        13:30

  
13:50 振り返ると違う景色が見える           13:50 この辺は砂浜が広い 
ここから見ると岬のように見えるが岬ではない。(御殿の鼻)
 
 14:10 防風林は見えるが堤防は見えない       14:20 砂浜がもっと広がる

 
14:30 サイクリングロードは防風林の中を通る       16:00 サイクリングロードが終わり夜須駅
                            に着いたのでこの日の歩行を終える。

    ********               ********

3/19 7時半、夜須に戻り歩行開始。9時前、赤岡駅、遍路道はここから北に向かい、40分歩くと28番札所大日寺に着くが今回は海岸線歩行を主にしたため、高知市桂浜目指し、海沿いに西に向かう。海岸から山が遠ざかり、人家が増える。海岸は岩ではなく砂浜の所が増える。高知市に近づくと堤防上を歩けないところが多くなり、堤防下や砂浜を歩く。500mほど砂浜を歩いた時は孫の土産にきれいな石を拾いながら歩く。13時、市街地に入り県道・国道歩きとなる。14時浦戸湾に架る浦戸大橋に至る。海面まで50m、風もあり歩道が狭いので怖々歩く。14時半、桂浜到着。今回の歩行の終着地である。30分程桂浜を散策し、月の出を待たずにはりまや橋に向かうバスに乗る。土佐空港で一人寂しく完歩の祝杯をあげ、22時には自宅に帰り着いた。

今回は6日間で海岸線120km(内50km以上は堤防歩き)、遍路道10kmを歩いた。一口で言うと、高知県の海岸は堤防で埋め尽くされていた。海岸線歩きでは堤防上を歩くべきか、歩かざるべきか、それが問題である。堤防は水平で歩きやすいが、川があると迂回したり、突然終わっていることもある。
      ********  19日海岸線歩行距離:21km  6日間合計歩行距離:121km

 
7:30 歩行開始。ごめん・なはり線の電車  7:40 夜須の海岸は板張りだった。何のため?

 
7:50 天候は回復して晴れ               8:50 赤岡港、道は北西から西方向へ向かう 

 
9:20 地元の人としばしおしゃべり       9:50 物部川大橋を渡る

 
10:10 物部川を渡ると高知空港がある     10:20 海岸に戻ると綺麗に整備された公園になっていた
                       南国市のリフレッシュ海岸というらしい
 
10:30 公園を過ぎると普通の堤防         11:00 しばらく砂利の浜を歩く

 
11:10 こんな所も通る             12:00 川で海岸が歩けないと迂回し集落に出る

 
12:10 また海岸を歩く。孫に土産の石を見つけながら。   12:20

 
14:10 浦戸湾に架かる浦戸大橋       14:10 浦戸大橋から高知市方面を見る

 
14:40 海岸線歩行の目的地・桂浜に到着   14:40 桂浜・6日間で121km歩いた。

     遍路・高知県Ⅰ   へ戻る
     遍路・高知県Ⅲ   へ行く
     遍路総集編     へ行く
     トップページ     へ戻る