横通岳(常念山脈)
2023年8月2~4日




毎年梅雨明け頃夏山に行くのが恒例である。しかし、80歳を過ぎると行ける山は限られてくる。

現在の体調で行ける山の条件を上げてみる。
1.高齢、単独行なので危険個所がない山 2.登山口から5時間以内で山小屋に着ける山 3. 2食付きの山小屋がある 4. 低山は暑いので3千米に近い山 5.景色の良い山
ちなみに最近登った山は木曽駒ケ岳、木曽御嶽山である。
常念岳が上の条件には合っていそうだ。早速8月上旬の常念小屋の予約を入れる。2010年には常念岳に登り、燕岳まで縦走したが、今回は常念小屋に連泊し東大天井岳あたりまで散策し、小屋のテラスで山を見ながらゆっくりと乾杯するつもりである。

8/2 9時半過ぎに一の沢登山口を出発。常念小屋まで5.5時間の予定だ。4時間ほど歩いた時、足に軽い痙攣がきた。あわてて薬を飲む。薬は直ぐには効かないので、10分ほど休む。薬の効果か楽になってきたので歩行再開。胸突き八丁のあたりで雨が降ってくる。
ふと気が付くとカメラ(コンデジ)が無い。今日は胸ポケットが無いシャツを着たのでザックのベルトの物入れに入れたのが失敗だった。長年愛用のカメラなので未練がある。下山中の登山者に出会ったので見つかったら一の沢登山口登山相談所に届けて頂くようお願いする。(下山後問合せたところ、安曇野警察に届いていた)
16時過ぎ(6時間半)で常念小屋に辿り着く。痙攣も収まり体に異常はないようだ。
 
 一の沢登山口                    登山道は何回か沢を横切る

8/3 7時 常念小屋から横通岳(よことおしだけ)に向けて出発。ゆっくり散策して昼前には小屋に帰る予定だ。
しかし小屋前で早速トラブル発生。ヤマレコの地図アプリが「GPSが使えない状態・・・」と出て動作しない。暫くスマホをいじってみたがわからない。近くの若者に聞いてみる。暫くいじってくれたがだめ、次の若者に聞いてみるがやはりだめ、3人目の若者が「再起動してみれば」そこで再起動してみると!!直った。「三人寄れば文殊の知恵」である。

小屋から大天井岳への登山道を10分も歩くと涸沢を前にした奥穂高岳が見えてきた。早速デジカメと思ったがデジカメは昨日の入山時に紛失してしまったのだ。仕方なくスマホのカメラで撮影。
スマホのカメラは好きではない。どう持って構えて良いかわからない、望遠の拡大加減が難しい、シャッターに触れると2,3枚撮れてしまう、手振れする、写真機能がいつの間にかビデオになっている等、理由は山ほどある。

1時間ほど歩いた所で雷鳥の親子に遭遇、暫く写真を撮る。雷鳥が登山道の近くにいるのは人間は無害と知り、鷹等の天敵から身を守るため人間を利用しているのだろう。雷鳥と出会った辺りで横通岳への道は大天井岳への登山道と別れるが、道はしっかりしている。コマクサがあちこちに咲いているので、踏まない様に注意して歩く。

8時45分 横通岳2767m山頂、日本で73番目の高山らしい。
突然道の無い方角から10名ほどの若者が飛び出してきた。某大学のワンゲルとのこと。60年前の私もワンゲルしていたな~と暫し昔をしのぶ。
若者たちが居なくなった後は横通岳を独り占めする。

無風快晴、いや所々に雲が浮かんでいる。一番近い山はもちろん常念岳、その右に奥穂を中心にした穂高連峰、キレットを挟んで南岳から槍ヶ岳、大天井岳、燕岳その後ろには後立山連峰。常念岳の左側には富士山が見えるがそれ以外の山々は逆光のためよく見えない。槍が正面に見える位置に丁度良い石があるので腰掛ける。

いつの間にか東側(安曇野方面)は雲のため何も見えなくなり、槍、穂高にも雲が纏わりついている。横通岳山頂に着いてから1時間ほど経過していた。いつまでも座っていたいがそうもいかない。昨日の入山時には夕立にあっているので今日も降る可能性がある。

下山は大天井岳に向かって尾根をいく。尾根道はハッキリした道ではないが危険な所はない。途中から尾根道を外れ、常念から大天井岳への道を目指して適当に歩く。
小屋の手前でテントサイトの住人と暫くよもやま話、後日ヤマレコ常連の「オレンジの長靴で三百名山」さんと判明、ヤマレコの世界は狭いものだ。11時半常念小屋帰着。

小屋の食堂前の槍ヶ岳が正面に見えるテラスに座り、ビール、昼食を頼む。槍を見ながらビールをゆっくりと味あう。ビールがが無くなると持参の泡盛に切り替える。近くに居た60代と70代の男性としばしいや2時間ほど山談義。前を見ると槍ヶ岳がずうーと顔を見せている。気持ちが良くなった所で部屋に帰り、2時間ほど昼寝。夜もぐっすり寝られた。

常念岳にはのぼれなかったが、横通岳は今年一番の至福の登山だった。また登りたい山である。
が、しかし、横通岳に登るには常念小屋に入・下山しなければならない。私の体力ではこれがきつかった。入・下山を考えると横通岳にはもう登れないだろう。
 
 日の出                      残月と槍ヶ岳


 登るにつれ常念岳山頂部が見えだす         涸沢と奥穂高岳も見えてくる

 
 子供の雷鳥が2羽                 近くで親が心配そうに見ている

 
 横通岳山頂への道                    横通岳山頂、三角点の横の石に座り山々を眺めた


 横通岳山頂にて 奥穂高岳方面


槍ヶ岳方面


 大天井岳方面


 燕岳方面

 
 山頂の東側、逆光でよく見えないが富士山も            山頂にて常念岳方面

8/4 常念からの下山時の悩みは登山口に到着する時間を予測する事である。下山路及び登山口は携帯電話が通じないので、小屋からタクシー会社に私の登山口到着時刻を通知し、予約する。5.5時間かければ下山できるだろうとの予測で、11時半にタクシーを予約し、6時に下山開始。

30分ほど歩いた所で左の登山靴の底が剥がれているのに気が付く。用心のために針金を持ってきていたのでグルグル巻きにし、歩き始める。歩けそうだ。しかし、15分ほど歩くと針金がゆるみだしたので、立ち止まり靴の踵側に押し込む。何度か押し込んだ所で神奈川県のAさんが通りかかり、テープのほうが良いと言って巻いてくれる。その時、右靴の底も剥がれているのに気が付きそちらも処置してくれる。Aさんありがとうございました。

テープの効果は抜群で、靴底の剥がれの心配は無くなったが石の上に乗ると滑りそうで、こわごわ歩く。そのうちタクシーの予約時間が気になりだす。しかし、ペ-スは上がらず、踏ん張りが利かなくなり、2度ほど尻餅をつく。
結局登山口に着いたのは13時過ぎ、7時間ほどかかってしまった。
最後は「こんな歩きをするようなら東海自然歩道はともかく、登山はこれでおしまいかな」と考えながら歩いていた。

下山後、温泉につかりながら「アクシデントで時間がかかり、タクシーの時間を気にして悲観的だったが、体はどこも痛くならなかったので、山を選べばまだ大丈夫だ」との思いにが強くなった。
毎年高い山に登る夏山、来年のことは来年決めよう。
どちらにしても、常念岳(小屋)にはもう二度と来ないだろう。

一週間経ってみると・・・良い山行きだった!

 
 8/4 6時 常念乗越、槍ヶ岳と残月が見送ってくれた       靴底の剥がれたmy靴

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